民主党の支持率低下が止まらない。むしろ私には、「そもそも期待が大きすぎたのでは?」、と感じる。思うに、民主党が苦戦する理由は、小泉改革が不徹底だったからだ。コンクリートから人へ、って難しい。公共事業の予算を削りながら、福祉予算を増やすのは大変なことだ。他の先進国では、財政赤字→新保守主義による徹底的に小さな政府→格差問題と貧困問題で左派政権ができて福祉の充実、というように、小さな政府、いってみれば"無"の時代を経由している。古い時代の大きな政府から、小さな政府を経て、新しい時代の大きな政府に転換している。ところが、自民党が「古い時代の大きな政府」を主張する人たちと「小さな政府」を主張する人たちの寄せ集めなもんだから、「小さな政府」化がイマイチのまま政権交代してしまった。したがって、民主党には、「無駄を削りながら福祉を拡充する」、という二律背反しかねない難題が科されている。しかも、民主党は「新しい時代の大きな政府」を目標としているのに、「古い時代の大きな政府」をテーゼとする国民新党と組んでしまった。うまくいくわけがない。
同じようなジレンマでよく取り上げられる話題がある。工学は傲慢だ、という話だ。工学の分野では、「トラブルがあったらシャットダウンする」ことが常識である。機械が壊れても、通電したまま修理したりしない。道路を造りなおすときは通行止めにする。一方で、生物学や医学は、対象(患者)の代謝を完全に止めて処置することはできない。人工心肺を回しはするが、患者の代謝が止まっているわけではない。一方、工学でも最近は事情がちょっと違うようだ。例えば橋を造りなおすときに、従来は通行止めにして造りなおしていた。しかし、いまは開通したまま造りなおす工法(片道通行とかそういうんじゃなくて)も発達している。だが、やはりコストは10倍以上もかかるらしい。工学者が支配する産業界が環境悪化に鈍感なのは、「いざとなったらリセットすればいい」という潜在意識があるからだ、という考察もある。
話がそれたが、「橋を部分開通しながら造りなおすとコストが10倍かかる」というのがキモだ。民主党政権に、サッチャー&ニクソンの保守主義と、ブレア&クリントンのオリーブの樹を同時に期待するのは、いくらなんでも押しつけがましいのではないだろうか。ちなみに、良くも悪くも世界の一歩先を行くアメリカは、ニクソン→クリントン→ブッシュJr→オバマと、日本が未だに到達できない変化をもう2周もしてしまった。
早い段階で、「小さな政府を目指す政党」と「新しいタイプの大きな政府を目指す政党」に政界再編するべきだ。もちろん「古いタイプの大きな政府を目指す政党」に議席はいらない。私は職業的背景からも大きな政府を支持するが、小さな政府の時代を経由する必要性を認識している。
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